がんの種類

上咽頭がん

1.上咽頭がんとは

上咽頭は解剖学的に鼻腔のつきあたりで、口を開けた時に見える口蓋垂、および扁桃腺(正しくは口蓋扁桃)の上後方の部位をさし、頭蓋底の骨を境として脳と接しています。この部位に発生するもので耳慣れたものはアデノイド(腺様増殖症)です。アデノイドは咽頭扁桃という組織が増殖するものですが、腫瘍性のものではありません。上咽頭がんはその周辺に発生する悪性腫瘍です。上咽頭の側壁には、耳管開口部と呼ばれる中耳と連絡する管の出口があります。このため、上咽頭がんでは鼻症状のみでなく、耳に関連した症状も出現します。

上咽頭がんは台湾、中国南部、東南アジアなどの地域に多く発生し、わが国ではまれな疾患です。現在、わが国における1年間の上咽頭がん発生数は、約500例と推定されます。男女比は3:1で男性に多く、年齢的には40〜70歳代に多発していますが、10〜30歳代にもみられます。組織学的には、ほとんどの場合が低分化型扁平上皮がんで、悪性リンパ腫がこれに次いでいます。頭頸部がんで、通常みられる高分化型扁平上皮がんは少なく、腺組織由来のがんはさらに少なくなっています。

上咽頭がんはまれながんですが、中国、台湾など東南アジア地区で伝統的に食べられる塩蔵魚でリスクが高くなることが確実とされています。特に、乳児期から幼少時代の摂取はリスクの増大につながります。また、ホルムアルデヒドの取り扱い作業との関連は、確立したリスク要因です。その他にEBウイルス(Epstein-Barr virus)やHLAの多型についても関連が指摘されていますが、まだよくわかっていません。


2.症状
上咽頭がんの症状としては、頸部リンパ節と呼ばれる首のリンパ節の腫脹(しゅちょう)があげられます。この腫脹は上咽頭がんの頸部リンパ節転移によるもので、多くの場合、耳介の下斜め後方にあるリンパ節(副神経リンパ節)が腫脹しますが、病気が進むと他の頸部リンパ節も腫脹してきます。上咽頭がんは、頸部リンパ節に転移することが多く、ほとんどの症例に認められています。頸部リンパ節の腫脹のみを主訴として外科や内科を受診し、なかなか診断がつかず、腫脹した頸部リンパ節の生検の結果、はじめて頭頸科(耳鼻咽喉科)で上咽頭がんの診断が確定することもあります。

上咽頭のがんそのものによる症状としては、鼻症状、耳症状および脳神経症状があげられます。鼻症状は鼻づまりと鼻出血が主なものです。この時の鼻出血は血液のみではなく、鼻をかむと鼻汁に血液が混じり、これが継続するというものです。耳症状は耳管開口部が、がんにより閉塞して耳のつまったような感じ、難聴(多くは片側性)などの症状をおこします。脳神経症状は、がんが脳神経を圧迫、あるいは直接侵すことにより発症します。どの脳神経も侵される可能性がありますが、外転神経障害のため物が二重に見えたりする他、まれに視神経の障害による視力障害や、三叉神経が圧迫されたり侵されることによる疼痛が認められます。

上咽頭がんは低分化型扁平上皮がんが多いため、他の頭頸部がんよりも遠隔転移が多く認められます。肺・骨・肝臓が遠隔転移の最も多い部位です。肺転移による胸部レントゲン写真上の異常陰影、骨転移による骨の痛み、肝転移による腹部超音波検査での異常像などによって遠隔転移が先に発見されることもあります。


3.診断
視診と組織診断により診断を確定します。がんの深部への拡がり、骨破壊の程度などを把握するためにCT、MRIを中心とした画像診断を行います。視診は、口腔内から後鼻鏡で「鼻でニオイをかぐように」といった呼吸をしながら観察する方法と、鼻からファイバースコープを挿入して直接観察する方法があります。

組織診断は、まず口腔、鼻腔、上咽頭にスプレーで局所麻酔剤を塗布し、咽頭反射と表面の疼痛を除去します。次に鼻腔からネラトンカテーテルといわれる細いチューブを挿入して軟口蓋を前方へ引出し、視野を広くしてから鉗子で腫瘍の一部を採取します。ときに頸部リンパ節のみにがんが認められ、上咽頭に変化のない場合でも、上咽頭が原発巣と疑われる時には、正常と思われる部位の組織をとることがあります(ブラインド・バイオプシー)。これは、正常と思われる粘膜の下にがん組織が隠れていることがあるからです。


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国立がんセンターがん対策情報センターより一部転載


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ぶどう膜悪性黒色腫【がんに効く食品サプリメント】


1.ぶどう膜悪性黒色腫とは

ぶどう膜とは、虹彩と毛様体、脈絡膜の総称のことです。色は茶色で、眼球を構成する強膜と網膜の間にあります。ぶどう膜に属する組織には、それぞれ役割があり、虹彩は眼球へ入る光を調節し、毛様体は焦点を合わせ、血管に富んだ脈絡膜は網膜に栄養を提供したり眼球の温度を一定にするといった働きをします。

ぶどう膜悪性黒色腫とは、このぶどう膜内に多く含むメラニン細胞が、がん化したものを指します。皮膚や粘膜に発生する腫瘍より、若干ですが悪性度が低いといわれています。

日本での年間発症率は、1,000万人に対して2.5人。性別や地域による差はさほどなく、年齢が高くなるにつれて発症率も上がる傾向があり、小児からの発生はほとんどありません。世界的に見れば白人の発生頻度は高く、1,000万人あたり43人ほどで、日本のおよそ17倍の発症が報告されています。これは、ぶどう膜黒色腫を発症させる危険因子のひとつが紫外線であるため、虹彩の色素が薄い白人の目に紫外線量が多く入るため、と説明されています。なお、赤道に近くなるほど、日差しが強い地域ほど発症頻度は高くなります。


2.症状

虹彩悪性黒色腫では、虹彩の黒いしみ状の腫瘤(しゅりゅう)として、また瞳孔の変形で見つかることが多く、緑内障を併発して発見される場合もあります。

毛様体悪性黒色腫は、水晶体を圧迫して白内障を生じたり、水晶体の位置がずれたりして視力低下を自覚して受診することが大部分です。

脈絡膜悪性黒色腫は、腫瘍の位置、大きさにより症状は異なりますが、視力低下が最も多く、次いで視野異常(見えない部分がある、上半分が見えないなど)があります。その他、変視症(ゆがんで見える)、飛蚊症(ひぶんしょう:目の前に蚊が飛んでいるような感じ)などの症状もあります。また、他の症状で眼科を受診して、眼底検査を受けたため腫瘍が偶然発見される場合もかなりあります。進行して腫瘍が大きくなると、緑内障を生じて目の痛みや充血(視力低下を伴う)などの症状が出現します。


3.診断
ぶどう膜悪性黒色腫の診断は、眼科的な検査である細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査や眼底検査が基本となります。補助的な画像検査として、超音波検査、MRI検査があります。病理学的検査をするには、眼球を摘出する以外は技術的に難しいため、臨床診断に基づいて治療法が決定されます。

虹彩悪性黒色腫では細隙灯顕微鏡で観察すると、虹彩表面から盛り上がった黒いかたまりとして見えます。高周波数の超音波検査で、虹彩腫瘍の大きさを測定し、増大傾向がある場合には悪性黒色腫を強く疑います。また、検査をすると虹彩嚢胞という虹彩毛様体によくある良性の水疱の場合があります。

毛様体悪性黒色腫では、水晶体を圧迫している腫瘍が虹彩と水晶体とのすき間から見えます。超音波検査やMRI検査などの画像診断でその存在と広がりを確認し、増大傾向がある場合は悪性黒色腫を強く疑います。

脈絡膜悪性黒色腫では、眼底検査を行うと、網膜の下に黒褐色で半球状の腫瘍が見えます。腫瘍に活動性があると、腫瘍からの滲出液が網膜の裏にたまる網膜剥離を生じます。また、螢光眼底造影検査では、腫瘍の部分で注入した造影剤の点状の漏れや、貯留が確認されます。小さい腫瘤では特徴的所見がなく、確定診断が困難です。北米で行われた大規模な研究でも、腫瘍の厚みが3mm以下の場合は診断が確実にできないため、経過観察を推奨しています。経過観察で腫瘍の増大、網膜剥離の出現などを確認した場合、臨床的に悪性黒色腫と診断します。このような臨床診断に基づき、結果的に眼球摘出を行った場合の診断一致率は99.5%と非常に高く、臨床診断に基づく治療が妥当と判断されます。


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聴神経鞘腫【がんに効く食品サプリメント】


1.聴神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)とは

神経鞘腫とは、神経を取り巻いて支える鞘(さや)から発生する腫瘍で、脳・脊髄腫瘍の一種です。一般的に、まれな悪性神経鞘腫を除いて良性の腫瘍で、手術で完全に摘出できる場合は治癒が期待できます。腫瘍細胞の増殖速度は遅く、脳以外の他臓器に転移することは極めてまれですが、長期間経過した後に再発する場合もあります。脳にできる良性腫瘍の中では、髄膜腫、下垂体腺腫に次いで3番目に多い腫瘍で、悪性脳腫瘍を含めた脳腫瘍全体の約10%を占めます。毎年、わが国で250〜300人に発生します。女性に多く(男性の1.6倍)、30〜60歳の間に多く発生します。

脳からは12対、脊髄からは30対の神経が出ており、それぞれ頭蓋骨および脊椎骨の孔を通り抜けて、身体の各部位に至っています。多くの場合、神経鞘腫はこれらの神経が脳・脊髄を出てから骨の孔に入るまでのわずかな場所から発生しますが、末梢神経や軟部組織にも発生します。聴神経(第8脳神経)から発生することが最も多く(70〜80%)、次いで三叉(さんさ)神経、顔面神経などから発生します。実際には、ほとんどが聴神経鞘腫ですので、ここでは主に聴神経鞘腫について解説します。

多くのがんの場合と同様に、神経鞘腫も腫瘍が小さい間に発見されると、手術を主体に完全に治療できる確率が高くなります。腫瘍が大きくなったり、周辺の脳組織、脳神経、脳血管などを巻き込むようになると、手術で完全にとり除くことは難しくなり、手術後に放射線療法が行われることもあります。一方、最近では腫瘍が小さい場合には、手術よりも放射線療法が行われることもあります。


2.症状
神経鞘腫の症状は、腫瘍が発生した神経の機能低下によるものです。具体的には、聴神経鞘腫では聴力低下や耳鳴、三叉神経鞘腫では顔の知覚低下などです。ときには、神経刺激症状(痛みなど)がおこることもあります。聴神経鞘腫による聴力低下は、語識別力の低下(音としては聞こえるが言葉として聞きとりにくい)からはじまることが特徴とされます。

腫瘍がある程度大きくなると近くの他の神経を圧迫し、それらの機能障害を伴うようになります。聴神経腫瘍では、ごく近くに顔面神経が走行しているので顔面神経麻痺(顔がたるんで反対側がひきつったように非対称になり、まぶたが閉じられない)を伴うことがしばしばあります。上方に位置する三叉神経が侵されると、顔面の知覚低下がおこります。下方に位置する舌咽神経や迷走神経が侵されると、嚥下(えんげ:食事などを飲み込むこと)障害や嗄声(させい:声がかれること)がおこります。

さらに腫瘍が大きくなると脳幹や小脳を圧迫するようになり、運動失調(手足のふるえやふらつき)や手足の運動麻痺、さらには意識障害がおこり昏睡に陥ることもあります。脳幹への圧迫が強くなると髄液の流れが悪くなり水頭症をおこすので、頭痛・嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状(ずがいないあつこうしんしょうじょう)をきたして、生命を脅かすこともあります。


3.診断
神経鞘腫の診断は、画像診断が主体となります。

1)画像診断
(1)MRI
磁気共鳴法という強力な磁場を用いた検査で、頭蓋骨による画像の乱れがなく、脳あるいは腫瘍のみを鮮明に映し出すことができ、またいろいろな断層面の画像も得られます。脳の構造が細部にわたり観察でき、腫瘍の正確な大きさや拡がりを知ることができます。最近では画像の精度も向上し、個々の神経や重要な血管の走行も描出することができるため、最も有用な画像診断法といえます。

(2)CT
X線とコンピューターを用いた断層撮影で、最も一般的な診断法です。造影剤の併用により、小さな腫瘍の診断も可能となりますが、腫瘍検出力はMRIのほうが優れています。しかし、CTの特徴は骨の状態を調べることができる点で、どの骨の孔が破壊され拡大しているかを見ることで、腫瘍の存在の裏付けを得たり、どの神経から発生した腫瘍かを推察できます。

(3)頭部のレントゲン検査
神経の通過する骨の孔が腫瘍で拡がっている様子をとらえます。

(4)脳血管撮影
聴神経のすぐ近くには、脳に栄養を送る重要な動脈や静脈があります。そのため、これらの血管の走行異常や奇形がないかどうかを術前に調べておくことが重要なので、大腿部の動脈から脳の血管まで細い管を挿入して脳血管撮影を行います。

2)耳鼻科の検査
神経の機能障害の程度を検査するため、聴力検査、顔面神経の機能の評価(これは味覚の検査を含むことがあります)、前庭神経(平衡感覚やめまいの神経)の機能評価を行います。


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国立がんセンターがん対策情報センターより一部転載

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下垂体腺腫【がんに効く食品サプリメント】


1.下垂体腺腫とは

下垂体腺腫とは、脳下垂体にできる脳腫瘍の一種です。脳下垂体は頭蓋骨の底部・中心部にあるトルコ鞍という窪みの中にある豆粒大ほどのものです。脳下垂体の上方には、ものを見るために必要な視神経が左右の眼球へ延びていき交叉しています。また、脳下垂体の横には、脳に血液を送る重要な血管(内頸動脈)や眼球を動かす神経が通っています。脳下垂体はその大部分を占める前葉と小さな後葉の2部に分かれており、全身のホルモンの中枢として多くのホルモンを分泌しています。前葉から分泌されるホルモンの中で重要なものは次の5つです。


前葉から分泌されるホルモンの中で重要なものは次の5つです。

1. 成長ホルモン
小児期から思春期にかけて、手足や内臓の成長を促します。

2. プロラクチン
出産後に乳汁を分泌させる働きをします。このホルモンが多量分泌されている間は月経は止っています。

3. 甲状腺刺激ホルモン
甲状腺に命令をして甲状腺ホルモンを分泌させる働きをします。男女とも生涯必要です。

4. 副腎皮質刺激ホルモン
副腎に命令をして副腎皮質ホルモンを分泌させる働きをします。男女とも生涯必要です。

5. 性腺刺激ホルモン
卵胞刺激ホルモンと黄体刺激ホルモンの2種類があります。男性では睾丸を女性では卵巣を支配し、それぞれの性ホルモンの分泌を促します。また精子や卵子の正常な発育にも重要なホルモンです。

後葉からのホルモンは次の2つです。

1. 抗利尿ホルモン
腎臓に働きかけて尿量を少なくする働きをし、男女とも生涯必要です。

2. 子宮収縮ホルモン
分娩時に子宮を収縮させます。

ほとんどの下垂体腺腫は良性で増殖速度は遅く、脳以外の他臓器に転移することは極めてまれです。20〜50歳の成人に多く発生し、脳腫瘍全体の約15%を占めます。脳下垂体の存在するトルコ鞍付近には、いくつか別の腫瘍、例えば頭蓋咽頭腫などができますが、それらは「脳腫瘍(成人)」あるいは「脳腫瘍(小児)」の項を参照して下さい。

下垂体腺腫には、ホルモンを異常に多く分泌するもの(ホルモン産生型の腺腫)と、ホルモンを分泌しないもの(ホルモン非分泌性腺腫)とがあります。ホルモン産生型の腺腫では、産生するホルモンの種類によりさまざまな身体の異常があらわれますが、ホルモン非分泌性腺腫の場合は、かなり腫瘍が大きくなるまで無症状のためになかなか発見されないこともあります。

多くのがんの場合と同様に、下垂体腺腫も小さい間に発見されると手術を主体とした治療で完全に治療できる確率が高くなります。腫瘍が大きくなったり、周辺の大切な脳組織・脳神経・脳血管などを巻き込むようになってきますと、手術で完全にとりきることは難しくなり、手術後に放射線療法や薬物による治療が行われることもあります。また、ある種のホルモン産生型腺腫では、薬物治療がまず試されることもあります。腫瘍が大きくなり、正常の脳下垂体が腫瘍により圧迫されてきますと、身体に必要なホルモンが不足してくることも多く、この場合は不足しているホルモンの補充療法が必要となります。


2.症状
下垂体腺腫による症状には、大きく分けてホルモンが過剰に分泌されることによるホルモン異常症候群と、腫瘍が大きくなることによる局所の圧迫症状とがあります。

ホルモン産生型腺腫は、産生されるホルモンの種類によって分類されています。以下にそれぞれについて症状を述べます。

1)プロラクチン産生腺腫
下垂体腺腫の約4割を占め、女性に圧倒的に多くみられる腫瘍です。女性では無月経と乳汁分泌がみられます。男性の場合は、性欲低下やインポテンツがみられます。大きくなると視野障害が出現することもあります。女性のほうが早期に発見されやすく、1cm以下の小さな腫瘍のことも多く、女性不妊症の原因のひとつとされています。

2)成長ホルモン産生腫瘍
腺腫の約2割を占め、男性にやや多くみられます。思春期に発症した場合は巨人症になりますが、これは比較的まれです。多くは成人に発症して手足の先端、額、あご、唇、舌などが肥大してきて末端肥大症となります。そのため、指輪や靴のサイズが合わなくなったり、数年のうちに顔つきが変わってきたりします。成長ホルモンの異常分泌が長期間続くと、糖尿病とそれに伴う高血圧などの血管病変を合併しやすくなります。

3)副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫
全下垂体腫瘍の数%にしかみられないまれな腫瘍で、若年から中年の女性に多く、クッシング病と呼ばれています。90%以上に肥満がみられ、特に顔は満月様に丸くなり、手足に比べて胸・腹が太る中心性肥満が特徴です。ニキビが出やすく、体毛が濃くなり、下腹部に青紫色のすじがみられます。また、高い割合で高血圧や糖尿病を合併し、精神症状が出ることもあります。

腫瘍が大きくなるためおこる圧迫症状には次のものがあります。

1)下垂体ホルモン産生障害(汎下垂体機能不全)
女性では無月経ないし不規則月経、男性ではインポテンツや性欲が低下し、体毛も薄くなります。また、疲れやすくスタミナ不足となります。さらに、強い肉体的ショックが生じた際にショック状態からなかなか回復できないこともあります。抗利尿ホルモンが不足すると、薄い尿が多量に出る症状(尿崩症)がおきます。

2)視力・視野の障害
腫瘍が上方に拡大してきますと、直上にある視神経交叉部を圧迫しはじめます。まず、両目の上外側から見えにくくなってきます。さらに進行すると両目の外側半分が見えなくなってきて、両耳側半盲と呼ばれる典型的な症状となります。

3)頭痛
頭痛もしばしば認められます。


3.診断
下垂体腺腫の診断には、主にレントゲンなどによる画像診断と内分泌学的検査(ホルモン検査)とがあります。

1)画像診断

(1)MRI
磁気共鳴法という強力な磁場を用いた検査で、頭蓋骨の影響がなく脳あるいは腫瘍のみを映し出すことができ、また自由な断層面の画像も得られます。脳や下垂体周辺の構造が細部にわたり観察でき、腫瘍の正確な大きさや拡がりを知ることができます。また、重要な血管の走行も描出することができるため、現在最も有用な画像診断法といえます。

(2)CT
X線とコンピューターを用いた断層撮影で、最も一般的な診断法です。造影剤の併用により、小さな腺腫の診断も可能となる場合も多く、また腺腫周囲の骨の状態を調べることができる点などの優れた特性をもっています。

(3)頭部のレントゲン検査
トルコ鞍の変形・破壊などの骨変化を調べます。

(4)脳血管撮影
下垂体のすぐ両側には脳に栄養を送る重要な内頸動脈が走行しており、この動脈の走行異常や奇形がないかどうかを術前に調べておくことが大切です。大腿部の動脈から細い管を脳の血管に進めて行われます。

2)ホルモン検査
ホルモン検査には、腺腫によって過剰に分泌されたホルモンを調べる意味と、逆に分泌が低下した状態のホルモンを調べる意味とがあり、主に静脈からの採血で行います。

ホルモン産生腺腫の場合は、そのホルモン(プロラクチン、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモンなど)の血中濃度が異常高値を示し、直接診断につながります。さまざまな刺激テストや抑制テストを行い、その分泌動態を調べることがあります。

一方、分泌の低下しているホルモンに対しては、そのホルモンの分泌刺激テストを行います。ふつう各分泌刺激ホルモン製剤を注射した後、15〜30分ごとに連続採血して目的のホルモンの血中濃度の変化を調べます。

3)眼科の検査
視力、視野、眼底の精密検査を行います。

4)耳鼻科の検査
以下に述べる経鼻的手術を予定している場合、鼻腔内や副鼻腔内に炎症や異常がないかを調べておきます。



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国立がんセンターがん対策情報センターより一部転載

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神経膠腫【がんに効く食品サプリメント】


1.神経膠腫(しんけいこうしゅ)とは

神経膠腫(グリオーマ)とは、脳に発生する悪性腫瘍で、原発性脳腫瘍の約30%を占めます。腫瘍を構成する細胞の形態から、星細胞腫(せいさいぼうしゅ:最も悪性である膠芽腫を含めると原発性脳腫瘍の22%程度を占めます)、乏突起膠腫(ぼうとっきこうしゅ:原発性脳腫瘍の約1.3%)、上衣腫(じょういしゅ:約1.1%)、脈絡乳頭腫(みゃくらくにゅうとうしゅ:約0.4%)、髄芽腫(ずいがしゅ:約1.2%)などに分類されます。一般に、この腫瘍は周囲の脳にしみ込むように拡がっていき(浸潤:しんじゅん)、正常脳との境界が不鮮明で、手術で全部摘出することは困難です。そのため、通常は再発を予防する目的で手術後の放射線療法や化学療法などが必要となります。

国内における脳腫瘍(転移性脳腫瘍を除く)の発生頻度は、人口10万人に対し12人程度とされ、欧米とほぼ同じであるといわれています。神経膠腫はそのうちのおおよそ30%を占め、最も多い腫瘍です。神経膠腫の中で最も多いのは星細胞腫で、その悪性度によって大きく4段階(グレード1〜4)に分けられます。最も悪性度の低いグレード1は、小児の小脳に発生する星細胞腫で、この腫瘍だけはあまり周囲の脳に浸潤しないので、手術のみで治癒することが期待できます。グレード2以上は手術だけでは再発することが多く、手術後に放射線療法や抗がん剤による化学療法が行われます。特にグレード4は、脳腫瘍の中でも最も悪性度の高い腫瘍のひとつで、膠芽腫(こうがしゅ)と呼ばれています。膠芽腫は、現在なお治療が困難な疾患であり、手術だけでは大半が数ヶ月以内に再発するため、術後の放射線療法や化学療法は必須です。


2.症状

1)頭蓋内圧亢進症状(ずがいないあつこうしんしょうじょう)

脳腫瘍の症状として頭痛・吐き気・嘔吐がよくあげられますが、これは頭蓋骨の内部の圧が高くなることによっておこる症状(頭蓋内圧亢進症状)です。脳は頭蓋骨という硬い入れ物に囲まれているため、脳腫瘍によってこの入れ物の中の容積が増え、内圧が上昇した結果、これらの症状がおこります。特に悪性腫瘍においては、大きくなる速度が速く、しかも腫瘍の周囲に広範な脳のむくみを伴うため、急激に圧が上昇します。最も多い症状は頭痛で、腫瘍の部位に一致して痛くなることも少なくありません。腫瘍のできる部位によっては、腫瘍が小さくても脳の中にある特殊な水(脳脊髄液)の流れが障害されて、脳室といわれる所に水がたまってしまい、水頭症を引きおこします。この場合も、容積が一定の頭蓋骨の中に水がたまってくるので頭蓋内圧が高くなります。頭蓋内の圧が極度に高くなると、大脳と小脳の間にあるテントという膜の隙間や、脳と脊髄を連絡する大後頭孔に向かって脳の一部が陥入する脳ヘルニアがおこり、突然意識がなくなったり、呼吸が停止するなどの重篤な状態を引きおこします。


2)局所症状

脳腫瘍のもうひとつの症状は、腫瘍ができている部分の脳の働きが障害されることによっておこる症状です。脳は部位によって働きがはっきり分れているため、腫瘍のできた部位によって出現する症状が異なります。例えば、前頭葉と頭頂葉を分ける中心溝という溝のすぐ前は運動野と呼ばれ、運動神経細胞が中央から側方に向かって足、手、顔の順に並んでいます。この領域の障害により強い運動麻痺が出現します。中心溝のすぐ後ろが感覚野であり、感覚神経が同様に足、手、顔の順に並んでいます。

また、優位半球(多くは左大脳半球)の前頭葉の側方および側頭葉の後上方には言語中枢があり、それぞれ障害を受けると、相手の話は理解できるが自分ではしゃべれない運動性失語と、相手の話も理解できなくなる感覚性失語をきたします。後頭葉は視神経の中枢であり、一側の後頭葉の障害は、その反対側の半盲(左右ともに右半分あるいは左半分の視野が欠ける状態)をおこします。その他、腫瘍の発生部位により、左右を間違える、計算ができなくなる、読み書きができなくなる、記憶が悪くなるなどさまざまな症状が出現するため、その症状から逆に腫瘍の部位を推察することができます。

小脳は運動のバランスをとる部分であるため、小脳腫瘍ではまっすぐに歩けないなどの歩行障害や手足のふるえが出現します。また、脳脊髄液の通路に近いため、その通過障害により水頭症も出現します。脳幹は脳のすべての神経が集まり脊髄に移行する部分であるため、小さな病変でも四肢が麻痺します。また、大脳の病変では反対側の片麻痺などをおこしますが、脳幹部では顔面や目の動きの麻痺と手足の麻痺が反対側になります。


3.診断

CT、MRIによってほとんどの脳腫瘍の診断は可能です。専門医が診れば、腫瘍の部位だけでなく、多くはその腫瘍の種類まで診断可能になります。CTはX線を用い、MRIは磁気を利用して断層写真をつくるものですが、情報量はMRIのほうが多く、人体に対する影響も少ないとされています。しかし、強力な磁気を用いるため、ペースメーカーを使用している場合や、過去の手術で体内に金属を埋め込んである場合などは検査ができないこともあります。

手術を行う際には、腫瘍と脳の血管との関係をみたり、腫瘍にどの程度血管が入っているかなどを調べる目的で脳血管撮影が行われます。足のつけ根の動脈から細い管を挿入し、頸動脈や椎骨動脈まで進めて造影剤を注入してレントゲン撮影を行います。より簡便な方法として、頸動脈に直接針を刺して造影剤を注入することもあります。また、最近ではMRIやCTを用いて脳血管を映し出す方法もとられています。


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国立がんセンターがん対策情報センターより一部転載

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下咽頭がん

1.下咽頭がんとは

人間の「のど」は、咽頭と喉頭の2つの部位からできています。そして咽頭は鼻に近いほうから上咽頭、中咽頭、下咽頭と下がっていき食道に続いていくので、下咽頭はのどの一番底の部分ということになります。また、喉頭は下咽頭の前面に位置しています。「のどぼとけ」にあたるところが喉頭で、その後ろが下咽頭ということになります。のどのおおまかな役割は、空気の通り道と食べ物の通り道の2つですが、中咽頭はひとつの道で2つの機能を果たし、喉頭と下咽頭のところでそれぞれ専門の2つの道に分かれます(空気:喉頭→気管→肺、食物:下咽頭→食道→胃)。この下咽頭にがんが発生した時、下咽頭がんといいます。

下咽頭がんの原因はまだよくわかっていませんが、喫煙や飲酒との因果関係が深いといわれています。ヘビースモーカーで大酒飲みの方ほど下咽頭がんにかかりやすく、下咽頭がんの「高危険群」といわれています。男性は女性の4〜5倍の頻度で発生し、年齢は50〜60歳代に多く、全体の60%以上はこの年代に発症します。ただ、下咽頭がんの発症に関してひとつ例外的なことは、下咽頭の輪状後部という部位にできるがんは、喫煙や飲酒に関係なく貧血(特に鉄欠乏性貧血)をもつ女性に多く発症するということです。

下咽頭がんも他のがんと同じように、早い時期に発見されれば手術や放射線療法により完全に治ります。しかし、下咽頭はがんがかなり大きくならないと症状が出ない部位であり、また頸部のリンパ節に転移しやすい特徴をもっています。そのため、下咽頭がんの60%以上は、初診時にはすでに喉頭に浸潤(しんじゅん:がんが周囲に拡がること)していたり、頸部リンパ節転移を伴う進行がんです。進行がんの治療の主体は手術となり、手術に放射線や抗がん剤の治療を組み合わせることもあります。手術は声帯を含め喉頭を全部とらざるを得ない場合がほとんどですが、最近はがんの浸潤範囲により、声帯を一部残すこともできるようになってきました。

下咽頭がんが発見された方の25〜30%に、食道がん(転移ではなく全く別のがん)が見つかっており、これを重複がん(同じ方に2つ以上の別ながんができること)といいます。これは食道がんの発生も下咽頭がんと同様に、飲酒や喫煙と深い関係があることが原因と考えられています。特にもともとはお酒が弱い体質なのに、鍛えて鍛えて強くなった方に下咽頭と食道の重複がんが多いことが最近の研究でわかってきました。そのため、下咽頭がんは治療前に上部消化管内視鏡(胃カメラ)の検査が必須となります。治療は下咽頭がんと同時に手術したり、下咽頭がんとは別に内視鏡(胃カメラ)で切除したりします。下咽頭がんと食道がんのそれぞれの病気の進みぐあいによって、手術の方法や治療法が異なってきます。


2.症状

1)嚥下(えんげ:飲み込むこと)時の異物感
下咽頭は食物の通り道なので、内腔に腫瘍が突出してくると、嚥下時に何かひっかかる感じやスッキリ飲み込めない感じが持続します。また、潰瘍(かいよう)型の腫瘍では焼けつくような痛みが出てくることもあります。

2)耳への放散痛
1)の症状と関連して嚥下時に耳の奥に鋭い痛みが走り、中耳炎にでもなったのではないかと思うような症状がおこります。これは下咽頭と耳をつなぐ神経の経路があるためで、下咽頭がんや進行した喉頭がんに特徴的な症状です。

3)声がれ
風邪でもないのにしわがれ声が続き、徐々に進行します。これはがんが喉頭に浸潤したり、声帯を動かす神経(反回神経)を麻痺させるために出てきます。また、さらに進行すると空気の通り道が狭まるために、ゼーゼーして息苦しくなります。

4)頸腫(けいしゅ:頸部のしこり)
下咽頭がんは、頸部のリンパ節(風邪の時や扁桃腺がはれると首に触れるグリグリのこと)に転移しやすく、約60%の人が初診時にはすでに転移しています。頸腫はこのリンパ節のはれです。のどの症状は全くなく、頸腫が唯一の自覚症状であることもあります。顎(あご)の骨の下方から鎖骨までの間で、複数個はれることも両側はれることもまれではありません。はじめは痛みもなく徐々に大きくなり、急激に大きくなることもあります。

これらの症状はいずれも徐々に進行増悪するのが特徴で、一度出た症状が治療なしに消失することはほとんどありません。


3.診断
下咽頭は構造上観察しづらい部位ですが、間接喉頭鏡という鏡を使ったり内視鏡でのどの奥をのぞきます。また、頸部を丹念に触ること(触診)によって、リンパ節転移の有無や、がんが周囲の組織にどの程度浸潤しているかを診断します。経験ある頭頸部外科医であれば、診察に訪れた初診時に診断が可能です。

診断をつけるための検査は大別して2種類あり、それががんかどうか決めるための検査と、それががんならばどの程度拡がっているのかを知るための検査です。

がんの治療方針を決める際の最も重要な病理検査(そのがんがどんな種類の細胞で構成されているかを調べる)のために、間接喉頭鏡や内視鏡を使ってがんのほんの一部を切除します(生検といいます)。また治療の際に、がんの浸潤がどこまでおよんでいるかが重要なポイントになるので、補助検査としてレントゲン(バリウムによる透視)やMRI、CTを行います。前にも述べたように、食道がんの合併が多いので、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を施行して重複がんがないかどうかチェックします。進行下咽頭がんは、他の臓器に転移する(遠隔転移)こともしばしばあるため、胸部レントゲンや、転移が疑われる臓器のCTやMRIを行います。


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網膜芽細胞腫【がんに効く食品サプリメント】


1.網膜芽細胞腫とは

網膜芽細胞腫は網膜から発生する悪性腫瘍で乳幼児に多い病気です。眼球をカメラに例えると網膜はフィルムに相当する部分です。瞳孔から入った光がレンズの働きをする水晶体で屈折されて網膜に映し出されます。水晶体と網膜との空間は硝子体と呼ばれる粘ちょうで透明な卵の白味のような物質で満たされています。

網膜芽細胞腫の発症頻度は15,000人の出生につき1人の割合で、性別、人種、地域による違いはありません。現在、わが国では毎年約80人が発症しています。両眼に生じる場合と片眼だけの場合とがあり、その比率は両眼1に対し片眼2.6です。この腫瘍は13番染色体長腕の13q14という部位にあるがん抑制遺伝子であるRB1遺伝子の異常によって発生することがわかっています。


2.遺伝・遺伝子
身体の1つの細胞には23対の染色体があり、同じ遺伝子が2個あります。もともと身体の細胞に遺伝子の異常がなく、網膜の一部の細胞だけで一対のRB1遺伝子の両方が働かなくなり、その結果、腫瘍が発生することがあります。この場合は必ず片眼性であり、遺伝性はありません。

一方、親の精子か卵子にRB1遺伝子の異常があると、これから発生した胎児の身体のすべての細胞はRB1遺伝子の一方に異常を持つことになります。この状態でも細胞は正常に働きますが、網膜が作られる過程で、他方のRB1遺伝子に異常が生じると、網膜芽細胞腫が発生すると考えられています。両眼性の症例すべてと、片眼性の症例の10〜15%がこの状態とされています。RB1遺伝子は細胞分裂に重要な働きを持つため、将来骨肉腫など別の種類の悪性腫瘍の発生頻度が高いので注意が必要です。

すでに網膜芽細胞腫の子(患児)がいる場合、次に生まれる子や患児の子に網膜芽細胞腫が発生する確率は、以下のように計算されています。家系に1人しか網膜芽細胞腫の患者がいない場合、両眼性の場合はその患児の子には49%、その患児の弟や妹には3%の確率で発生し、片眼性の場合はその患児の子には5%、その患児の弟や妹には2%の確率で発生します。

遺伝子解析技術の進歩により、血液検査で遺伝子異常を検出できるようになってきました。しかしながら、現在の技術では60〜80%しか発見できません。着床前診断、羊水検査などの技術もありますが、網膜芽細胞腫は現在の倫理指針では対象になりません。遺伝子検査の目的、限界を十分理解していただくために、遺伝相談外来などでカウンセリングも行われています。


3.症状
主な症状としては、眼球の中で白い腫瘍が大きくなり、瞳を通して白く光って見える、白色瞳孔と呼ばれるものがあります。次いで、斜視(2つの眼球の向きが合っていない場合)、まぶたのはれ(進行例で眼球外に腫瘍が波及した場合)などがあります。このような症状に気づいて眼科を受診する年齢の平均は、両眼性で生後11ヵ月、片眼性で27ヵ月です。95%が5歳までに診断されます。

13番染色体に大きな異常があると、精神発達が遅くなる場合があり、耳・指などの異常を伴うことがあります。


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脳腫瘍【がんに効く食品サプリメント】


1.脳腫瘍とは

脳腫瘍とは、脳組織の中に異常細胞が増殖する病気です。

脳腫瘍には、脳組織自体から発生する原発性脳腫瘍と、他の臓器のがんが脳へ転移してきた転移性脳腫瘍の2種類があります。

原発性脳腫瘍には、良性と悪性の2種類あります。たとえ良性の腫瘍であっても、頭蓋内という限られたスペース内に発生する脳腫瘍は、大きくなると正常な脳を圧迫し障害をおこし、治療の対象になります。

脳腫瘍(中枢神経を含む)の発生率は、1年間に人口10万人に対して約3.5人です。

脳腫瘍は全体として悪性のものが多く、その細胞の形や性質により細かく分類されています。治療法、完治の可能性や予後は、この脳腫瘍の種類と全身状態によりほぼ決められます。

以下に原発性脳腫瘍の種類と割合を示します。

脳腫瘍の種類 割合
1.神経膠腫 28% (悪性)
 1-1 星細胞腫(せいさいぼうしゅ) (28% ) 比較的良性
 1-2 悪性星細胞腫 (18%) 悪性
 1-3 膠芽腫(こうがしゅ) (32%) 悪性
 1-4 髄芽腫(ずいがしゅ) (4%) 悪性
 1-5 その他 (18%)
2.髄膜腫 26% (良性)(一部悪性)
3.下垂体腺腫 17% (良性)
4.神経鞘腫(しんけいしょうしゅ) 11% (良性)
5.先天性腫瘍(頭蓋咽頭腫など) 5% (比較的良性)
6.その他 13%  


原発性脳腫瘍の中で最も多いのが、神経膠(しんけいこう)細胞から発生する神経膠腫と呼ばれるもので、全体の約28%を占めます。神経膠細胞とは、神経細胞と神経細胞の間や、神経細胞と血管との間にあり、栄養や酸素を神経細胞に供給する役割をもっています。

神経膠腫のうち、最も発生頻度の高いものは星細胞腫です。成人では大脳半球に多く、小児では小脳に発生しやすいものです。小児の星細胞腫の中には、手術で治癒するものがあります(詳しくは「脳腫瘍(小児)」の項を参照して下さい)。

成人発生の星細胞腫には、比較的良性の星細胞腫と悪性の悪性星細胞腫とがあります。星細胞腫は比較的良性の腫瘍ですが、悪性化をおこすことがあるため注意を要する腫瘍です。膠芽腫は、神経膠腫全体の約1/3を占め、神経膠腫の中でも最も悪性度が高く、45〜65歳の男性に好発する非常に治療が難しい腫瘍です。

神経膠腫に次いで多いのが、脳を包んでいる髄膜に発生する髄膜腫です。その他、ホルモンの中枢である下垂体に発生する下垂体腺腫、聴神経に発生する神経鞘腫などがあります。

原発性脳腫瘍が、頭蓋内の病巣から肺や肝臓など他臓器に転移することはほとんどありませんが、他の臓器で生じたがんが脳に転移することは少なくありません。これを転移性脳腫瘍といいます。特に脳への転移が多くみられるのは、肺がん、乳がんなどです。また、肺がんの転移は脳実質と呼ばれる脳の内部に、乳がんの転移の場合は硬膜などの膜組織に定着しやすい性質をもっています。また、転移性脳腫瘍の特徴として、転移が複数個所認められることがあげられます。さらに、脳脊髄液という脳を取り囲んでいる液体の中で、がん細胞が増殖することもあります。この場合は極めて治療が難しくなります。


2.症状

頭痛の程度が徐々に強くなったり、嘔吐の頻度が増えてきたり、歩き方や話の内容や話し方がおかしくなってきた場合には医師の診察を受けましょう。このような症状は脳腫瘍以外の原因でもおこることがありますが、注意が必要です。

脳腫瘍がおこす症状には、腫瘍自体が神経を圧迫したり壊したりする局所症状と、限られた頭蓋内スペースの中で腫瘍が大きくなることによりおこる頭蓋内圧亢進症状(ずがいないあつこうしんしょうじょう)があります。


1)局所症状

脳は神経の中枢ですが、運動や感覚などのいろいろな機能は脳の中で分散して行われています。例えば、左の前頭葉の運動野という手足などを動かす部位に腫瘍ができると右半身の麻痺がおこるというというぐあいです(右側に腫瘍ができた時は、麻痺は左半身におこります)。

脳の前方にある前頭葉の左側に腫瘍ができた右利きの人の場合には、無気力、痴呆様行動などの性格変化や尿失禁、右半身の麻痺、言語障害などが出現します。

後頭葉に腫瘍ができた時は、視野狭窄(しやきょうさく)、視野欠損などがみられます。

右利きの人の左前頭葉(左利きの多くの人では右前頭葉)に腫瘍ができると言語障害がおこります。


脳の中心にある下垂体や松果体(しょうかたい)、視床下部付近に腫瘍ができると眼を動かす動眼神経の障害で複視(物が二重に見える)などの異常をおこしたり、ホルモンの分泌異常のために無月経や成長障害などの内分泌障害などがおこることがあります。

小脳や脳幹と呼ばれる部位に腫瘍ができた場合には、手足などがふらつき、調整が効かない失調になったり、聴力障害、顔面麻痺、めまいなどがおこってきます。


2)頭蓋内亢進症状

限られた頭蓋内で腫瘍が大きくなると、正常な脳を圧迫し頭蓋内圧が上昇します。これにより持続的な頭痛、吐き気、うっ血乳頭(眼底検査で視神経乳頭がはれていること)などがみられるようになります。

慢性頭痛はその中でも最も注意しなければならないものです。頭痛は脳腫瘍以外の病気でもおこりますが、脳腫瘍の場合には慢性的に持続し、朝起床時に強く、その後は次第に症状が弱くなっていく傾向があります。初期の脳腫瘍の約20%にみられますが、進行するにつれ70%以上みられるようになります。頭痛の増悪とともに吐き気、痙攣、失神などもみられるようになります。これらの症状がみられた時は、すぐに医師の診察を受ける必要があります。


3.画像診断

脳腫瘍の場合、脳ドックを除いて他のがんで行われているような検診制度はありません。今まで述べたような脳腫瘍を疑わせる自覚症状がある場合、早期に診察を受け、症状の経過を詳しく説明して、神経学的な異常があるかどうかを調べてもらうことが大切です。また、脳に転移しやすいがんで他のがんの治療を受けている場合、前に述べた自覚症状があらわれた時には、CT、MRIなどの精密検査を受ける必要があります。

1)CT(コンピュータ断層撮影)、MRI(核磁気共鳴像)
現在の画像診断の中心をなす撮影法です。腫瘍の位置や大きさ、画像上の特徴がわかり、重要な検査です。現在では5mmほどの大きさの腫瘍までわかるようになっています。大きさの変化や形状の時間的変化、周囲の脳との位置関係などを見る上で重要です。

2)脳血管造影
脳の血管を造影することにより、腫瘍への栄養血管や腫瘍自体の血管の性状などの詳細な情報を取得でき、診断や手術検討に用いる重要な検査です。

3)その他
超音波検査は現在手術中に行われ、術中の腫瘍の位置を正確に知る上で重要な役割を担っています。その他にも、いろいろな検査機器が開発されています。


4.病期診断

成人脳腫瘍が画像診断で見つかった場合には、次に治療方法を決定するために脳腫瘍がどのような種類で悪性なのか良性なのか、悪性の場合にはどの程度悪性なのかを決める必要があります。

このためには、開頭手術を行って腫瘍をできるだけとってその組織を顕微鏡で調べ、脳腫瘍の種類と悪性の場合には悪性度を診断する病理診断が行われます。また、画像診断所見によっては、手術で腫瘍の一部を採取して同様に病理診断を行う方法があります。どちらを選ぶかの基準の多くは、画像診断と全身状態によります。


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タグ:脳腫瘍 がん

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小児脳腫瘍とは

1.小児脳腫瘍とは

子供(小児)の脳腫瘍は、大人(成人)の脳腫瘍と比べ、腫瘍の種類、好発部位が異なるため、多くはその症状の経過も成人の場合と異なります。成人では大半の脳腫瘍が大脳に発生し、その発生部位により手や足が利かなくなったり(運動麻痺)、しびれがあったり(知覚障害)、言葉がうまく出なくなったり(言語障害)します。小児の脳腫瘍は、半数近くが小脳や脳幹などに存在することから、脳の水(脳脊髄液)の通過障害により水頭症をおこしやすいことになります。しかしながら、脳内に水の貯留があっても、子供は骨の縫合線が離開しやすいため、頭の中の圧(頭蓋内圧)の上昇があまりみられず、単に不機嫌であったり、軽い歩行障害を示す以外に症状がみられないこともあります。

最も多い小児脳腫瘍は、小脳にできる良性の星細胞腫(せいさいぼうしゅ)で約20%を占めます。その他、悪性の髄芽腫(ずいがしゅ)が12%、胚細胞腫瘍(はいさいぼうしゅよう)が10%、先天性の腫瘍で頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)という良性腫瘍が9%、上衣腫(じょういしゅ)が5%となっています。


2.症状

脳腫瘍の症状は、頭蓋骨という限られた空間の中に腫瘍ができたり、脳の水がたまったりしておこる頭蓋内圧亢進症状(ずがいないあつこうしんしょうじょう)と、腫瘍によりその部位の脳の機能が障害されておこる局所症状に分けられます。

1)頭蓋内圧亢進症状
小児脳腫瘍は成人に比べ、小脳や脳幹のある後頭蓋窩と呼ばれる狭い空間にできることが多く、脳の水(脳脊髄液)の通路が閉塞しやすく、頭に水がたまり水頭症をおこします。その結果、頭蓋内圧が高くなり、乳幼児であれば頭囲が拡大します。また、大脳の腫瘍でも大きくなれば頭蓋内圧が高まります。成人では、頭痛・嘔気・嘔吐がその症状としてあらわれますが、小児では、単に食欲が低下したり、突然嘔吐したり、また不機嫌であったりするだけのこともあります。

2)局所症状
脳腫瘍のできた部位により、その領域の神経細胞が障害を受け、特徴的な症状が出現します。例えば、前頭葉の後部には運動野と呼ばれる運動神経の集まっている領域があり、その障害により反対側の手足の麻痺が出現します。また、右利きの人では左前頭葉の側方に言語中枢があり、その障害により話をすることが不自由になります。後頭葉の障害では視野の狭窄(きょうさく)がおこります。小脳が障害された時には、歩行時のふらつきが出たり、姿勢の保持が困難になったりします。しかしながら、小児ではいずれも成人ほど典型的な症状を示さないことも多いので注意が必要です。


3.診断
CTおよびMRI検査で、ほとんどの腫瘍が安全にかつ正確に診断可能です。CTはX線を用い、MRIは磁気を用いて、コンピュータで処理を行って断層画像をつくります。腫瘍の位置、正常組織との関係、造影剤の投与前後での変化などから、腫瘍の位置、拡がりだけでなく、細かい組織診断まで推察できます。脳血管撮影は、かつては診断のために必要でしたが、最近では手術を前提にした場合や血管性病変の疑われる場合を除いて行われることが少なくなってきました。MRIやCTを用いた血管撮影(MRA、ヘリカルCT)の精度もよくなり、今後はさらに少なくなると思われます。

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